告白 雪菜





「こんな国いっそ滅んでしまえばいい」


私は、とてもずるい生き物です

兄さんを捨てた故郷が憎らしい、でも、私は、あの故郷を愛しています。
私と貴方が生れ落ちた場所・・・、たとえどんなに陰惨な暗く沈んだモノだとしても

私と貴方をつなぐ、唯一の場所・・・



だから、私は嘘をつきました、



「いっそ滅んでしまえばいい・・・」



・・・どんなに望んでも、それは、決して発してはいけない言葉
故郷の命は、私のものではないのですから



「・・・滅んでしまえば・・・」



それでも、私は、その言葉を選びました・・・
貴方の気に入る言葉を、私はわざと選んではなった・・・



とても、冷たい鼓動がしました
私の鼓動です、全ての血液が一瞬にして凍りつき
・・・きっと、
私はひどく醜い表情であったのだと思います


けれど、私は、貴方に好かれたかった
故郷を悪者にしてでも、
故郷の全ての氷女の命をはかりにかけてでも・・・


貴方の心の痛みを・・・


私も分かち合っていますと・・・


でも、それすらも、見透かされていたのですね・・・




『滅ぼしたいのなら自分でやれ』





貴方が、少し間をおいて言い放ったその短い言葉が、

私の胸に刺さりました。



私はとても、愚かな事を貴方に言ってしまったのだと、
その時、私に諭(さと)してくれた。



どんなに私が貴方に近づこうとしても、
貴方の怒りは貴方のモノ、

それはあなた自身の心。怒りもその故郷への憎悪すらも、


貴方は己に消化している。




きっと、

私が貴方に似せて、故郷を憎んでいるのだと、
けれど
それこそ、無意味な事なのだと・・・。



私はとても恥ずかしい、




貴方は、私を見ていてくれていた。
私が、貴方を求める以上に、きっと貴方は私を思ってくれていたのですね。





しゃらん・・・

しゃらん・・・




どこかで、氷の溶ける音が聞こえます。
とても、ゆっくりと、そして、とても小さな音でした、
けれど、
私にははっきりと、その音が届いています。今も絶え間なく届いています。



あれは、光・・・?
あれは、光・・・?



光は痛みです。まぶしすぎて、私にはとても痛く感じらるモノでかありません。

けれど、




氷を溶かし始めた光は、
とても、穏やかに、柔らかく、温かなものでした・・・。




ああ、光は、こんなにも優しい・・・。






光はこんなにも、優しいものだったのですね・・・。


兄さん・・・、


私は貴方にたどり付く事ができましたか・・?

兄さん・・・、


私は、貴方に愛されているのだと、うぬぼれてもいいですか・・・?


いいえ、いいえ・・・。


それでも、貴方に出会えてよかった・・・


貴方の半身として生を受けられて、






よかったです・・・。





=追記=

飛影が、躯に呼ばれて魔界へ行く直前の2人の会話。


とても短い言葉の中にも
2人の想いの全てがつまっていると思います。


雪菜の兄探しの終点の場所であり。
それと同時に本当のこれからの彼女自身の旅立ちの瞬間。

雪菜、貴方は、お兄さんにやっとたどりつく事ができたんだよ。
良かったね。良かったね・・・。
と、
そんな想いの場面です。

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